人生、70年近く生きてきて、まさか自分が「棚おろし」にハマる日が来るとは思わなかった。棚おろしといえば会社の仕事、若い頃の面倒な作業の代表格。ところが今や、暇を持て余したシニアの私が、家の中で自主的に棚おろしを始めているのだから、人生とはわからないものだ。
若い頃はというと、投資信託だの金だの、金融商品に手を出しては「一番高い時に買い、一番安い時に売る」という、教科書に載せたいほどの逆神っぷりを発揮していた。儲かるどころか、むしろ「金融に寄付しているの?」と妻に言われる始末。その反動か、年を重ねるほどに“ケチ精神”だけは磨かれていった。
暇つぶしのはずが、気づけば大仕事に
そんな私が、ある日ふと気づいたのだ。
「あれ、うちって在庫多すぎない?」
洗剤は3本、醤油は4本、乾電池はどこを開けても出てくる。安いからと買っておいたはずが、家に帰るとすでに同じものが眠っている。しかも賞味期限が切れて捨てる羽目になることも多い。ケチのつもりが、実はとんでもない無駄遣いをしていたのだ。そして極めつけは、いざ使おうと思った時に限って、肝心なものが切れている。
「トイレットペーパーがない!」
「味噌がない!」
「電池がない!」
この“ないない事件”は、我が家の名物と言ってもいい。
そこで私は決意した。
在庫調べ、いざ開始!
在庫リスト作りは宝探し
昔の仕事魂がムクムクと蘇り、私はノートを広げて表を作り始めた。家にあるものを片っ端から書き出す。調味料、缶詰、乾物、洗剤、トイレットペーパー、電池……。気づけば、まるで小さな商店の棚卸しである。これが意外と楽しい。
ローリングストックとの出会い
暇なシニアにとって、時間はいくらでもある。
「お、こんなところにツナ缶が!」
「え、カレーのルーが6箱も?」
宝探しのようでワクワクする。
そして在庫を眺めているうちに、あることに気づいた。
ローリングストックって、これのことか!テレビでよく聞く「ローリングストック」。災害時の備えとして、普段から食べ物を買い置きし、使いながら補充していく方法だ。「なるほど、これってケチの私にぴったりじゃないか」
賞味期限切れで捨てるのはもったいない。でも、備えは必要。
その両方を満たすのがローリングストックだと知った時、私は軽く感動した。しかも、在庫リストを作っておけば、何がどれだけあるか一目瞭然。買いすぎも防げるし、足りないものもすぐわかる。これはまさに、私の“アンバランスな人生”を整える救世主ではないか。
フードロスに気づいた日
在庫を整理していると、賞味期限が過ぎた缶詰や乾物がいくつも出てきた。
「もったいないことをしたなぁ」と反省しつつ、
「これからはちゃんと使い切ろう」と心に誓った。
フードロスは他人事ではない。我が家のキッチンでも、静かに起きていたのだ。
今日から私は“在庫管理担当オヤジ”になる。
こうして私は、在庫リストを作り、ローリングストックを始めることにした。作業は膨大だが、これがまた楽しい。まるで第二の人生のプロジェクトが始まったようだ。「よし、今日も棚おろしだ!」
そんなふうに張り切る自分に、妻は呆れつつも笑っている。
でもいいのだ。
人生の後半戦、楽しんだ者勝ちである。
きちべえ

