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(読者投稿)ちょっと近場へ遠足気分、懐かしい坂道を歩く

箕面の滝

大阪北部の明治の森にある箕面の滝へ久しぶりに出かけた。妻が「近くに用事があるから、ついでに辺りを散策しませんか?」と言う。妻は子どもの頃に一度行ったきりらしい。私も昔に訪れたはずだが、記憶はおぼろげだった。

自宅から40分ぐらいで阪急箕面駅。そこで妻と待ち合わせた。改札を出るとすぐに山へ向かう坂道が始まる。そこに「東海自然歩道 西の起点」と記された石標があった。「あっ、そうだった」とよみがえったのは高校時代の懐かしい思い出だ。体育の授業日数が足りず、挽回のために友人と二人で「東海自然歩道を東京まで歩けば何とかなるのでは」と考えたのだ。体育教師に相談すると、「やれるものならやってみなさい」と、今なら完全にアウトなノリで背中を押された。そのスタート地点が、まさにこの箕面。夜明けの坂道を肩に食いこむほどの重いリュックを背負って登ったあの日。結局その挑戦は、滋賀県信楽あたりで早々に力尽き、電車で名古屋へワープし、そこで乗り換えて帰宅するという“瞬間移動の旅”になった。私の青春期は、こんなものだった。

坂道は思いのほか緩やかなハイキングコースだ。横を流れる川の水が岩に当たり、小さな滝のような音を立てている。空気感も一気に変わり、醸し出されるマイナスイオンが心地よい。途中、富くじ発祥のお寺などを横目に20分ほどで少し息が上がった。ちょうど良いところに洒落た洋館風のカフェがあった。昔はなかったはずだ。休憩しようか迷ったが、ここで座ると二度と立ち上がれない気がして、そのまま歩き続けた。ところが、このカフェが“分岐点”だったのか、ここから坂が急にきつくなる。さらに歩く。ゴール前の岩積みの階段を転ばないように慎重に登りきると、目の前に豪快な瀑布が現れた。
驚いたのは、観光客の九割近くが外国旅行客だったこと。万博開催時以上の国際色だ。外国の方は滝が好きなのだろうか。特別に巨大な滝ではないが、近くにこんな“特別な場所”があったのだと、改めて感慨深い。

しばらく滝を眺めてから下り道へ。帰りは圧倒的に楽だ。ふと、結婚前に妻と来たことを思い出した。地方にいた両親への紹介などを話しながら歩いた気がするのだが、妻は完全に忘れているようだ。まあ、よくあることだ。駅に近づくと、名物の「もみじの天ぷら」の店が夕刻の片付けを始めていた。中学生の頃、将来の夢に「箕面で土産物屋をやりたい」と作文に書いて担任に呼び出されたことを思い出す。

久しぶりに訪れてみて、記憶と違うところも多かったが、空気の清々しさは昔のままだった。近くにあるから、いつでも行けると後回しにしないで、足腰がまだ動くうちに、思い出がいっぱいの地をもう一度歩いてみよう。

摂津びと

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